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映画評 「話す犬を、離す」 [映画評]

私は犬が好きだ。
無条件に好きだ。
犬を見ているだけで、幸せな気分になる。
「話す犬を、離す」は、別に犬が主役の映画ではない。
しかし、要所要所に出てくる犬が実に可愛い
可愛い、と言ってもテリアやマルチーズ的な可愛さではない。
なんというか、犬らしい可愛さである。
これほど犬を可愛いと思わせる映画はあまりなかった気がする。
それが目的の映画ではないだろうけれど。

本作は、レビー小体型認知症を発症した母と、それを支える一人娘の物語である。
認知症といっても、それほど深刻なものではなく、幻視幻聴があるものの、日常生活に大きな支障はない。
それでも、家族としては心配になる。
主人公である娘は女優をしていて、映画出演のチャンスが舞い込むのだが、母の介護に気を遣わざるを得ず、なかなか集中できない。

主人公は、女優として芽が出ていない自分を歯がゆく思っていて、
友人の俳優や俳優の紹介で引き合わされた映画監督も主人公を引っ張り上げようとする。
しかし、認知症の母を一人で支える重みに、徐々に耐え切れなくなっていく。

映画は、それほど暗いトーンで描かれてはおらず、どこかユーモアも漂っている。
だから、大きな破綻はないのではと思って観ていたが、主人公の下す結論は苦いものだった。
通常の映画は甘いハッピーエンドで、そうした苦い決断は周りの支えでひっくり返ったりするのだが、そうはならなかった。
映画としては、それでよかった。

ちょっと残念だったのは、たまたまつけたラジオから流れてきた声に救われるシーン。
「何もつなげられなかった」と後悔する主人公を救済するために、なんらかの手立てをするのは必要であったと思うが、あまりにも偶然に左右される形だったのはちょっと興覚めだった。
ここをこうすれば、とか、ここをもっと真面目に突き詰めてくれれば、とか、いろいろ言いたくなる映画が多いなか、本作はきちんと作られていただけに、ご都合主義になってしまったラジオが残念。

主人公を演じておられたのは、つみきみほさん。
自然な演技で、すっかり役にはまっておられた。
まるで、ドキュメンタリーを見ているような気分にさえなった。

お母さん役の田島令子さんが、またいい味。
素人っぽいとまで思える演技なのだが、それが認知症という自分の状態に戸惑っている姿とうまく重なっていた。

監督は、熊谷まどかさんという女性の方。
ご自身を投影されたのかどうかわからないが、映画の中に出てくる女性映画監督がドタバタされていておかしい。
映画への情熱も、この人物を通して語られていた。

「話す犬を、離す」は、少ない予算で作られた映画であると思うが、それがかえってリアリティを醸しだす効果につながっていた。
認知症がテーマであるが、深刻になり過ぎず、かと言って受け流してもいない。
どんな人が観ても、身につまされるのではないだろうか。

そして、犬が可愛い。
口を開けてハアハアしている姿も、
草原をちょっと飛びながら走って来る姿も、実に可愛かった。

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映画評 「チア☆ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~」 [映画評]

映画「ビリギャル」の副題は、「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」である。
オチ言っちゃってんじゃん、ということにはなるが、実際には大抵の映画で薄々オチはわかっている。
水戸黄門だって、毎週オチは決まっているのに、大変な長寿番組だった。
今作も、女子高生がチアダンスで全米制覇するというオチが宣言されている。
だから、意外性はない。
すべてが予定調和で進んでいくことを、タイトルが宣言している。
逆に、「オチが見え見え」という批判は封印されるが。
観に行く客は、オチにつながる過程を楽しむことになる。

そして、私はそれなりに楽しめた。
友情あり、ほのかな恋あり、親子愛あり、師弟愛あり、挫折あり、涙あり、勝利あり、
という定番中のド定番の流れだが、ド定番になるのはそれが好きな人が多いからである。
退屈せず、楽しく観ることができた。
ギャグっぽいシーンが滑っている感は否めなかったし、
天海祐希演じる先生のエピソードは胸に響かなかったし、
ラストシーンももったいなかったし、
もっとできたんじゃないかとも思うけれど、
そこそこ楽しかった。

主演は、広瀬すずさん。
「海街diary」「ちはやふる -上の句」「ちはやふる -下の句」「四月は君の嘘」「怒り」
と広瀬さんが出演している映画を次々観ている。
特別、広瀬さんのファンというわけでもないのだが、話題作に次々出演されているということだろう。
今、最も走らせたい若手女優といった感じだろうか。
この映画でも、覚悟を固めて走り出すシーンがある。
ところで、「ちはやふる」のファンとして、広瀬さんを見るたびに思うのは、「『ちはやふる』の続編の撮影どうなっているのかしら?」ということである。
今作でも共演された真剣佑さんともども、そのときまで無事にいてほしい。

先生役の天海祐希さんは、設定に説得力がまったくなく、大げさな演技が空回りする形になっていた。
しかし、コメディと割り切れば、それはそれでいいのだろう。

「チア☆ダン」は、青春ど真ん中の映画。
青春真っただ中の若者も、
これから青春を迎える小学生も、
青春の時期は過ぎた大人たちも、
分かりやすく感情移入できる作品であると思う。
傑作とか秀作とかいうのとは遠いが、素直に楽しむことができる。
「なんか、俺も頑張んなきゃなあ」
という気にもさせてくれる。
広瀬すずファンなら文句なしに楽しめるし、
広瀬さんのファンでなくても、青春ものが好きなら愉快な2時間になるだろう。
最後は、なんと全米制覇である。

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劇場版「ソードアート・オンライン」で思うクール・ジャパンの危うさ [映画評]

劇場版ソードアート・オンライン オーディナル・スケール」が好調な興行を続けているようだ。
コアなファンを持つ作品は、初週にどっと客を入れ、その後は急激に下がるのがパターンだが、公開から3週を経過しても客足は衰えていないようだ。

私はソードアート・オンライン(SAO)についてはまったくの部外者だが、楽しみに観に行った。
海外でも人気の高い作品ということで、世界に通じる一本になっていることを期待した。
しかし、がっかりであった。
とてもではないが、傑作と呼べる作品ではないし、胸を張って世界に売れるともまったく感じられなかった。
何より、伝わってくるものがなかった。
だから、お客さんが入っていると聞いても、嬉しい気持ちにはなれない。

私は、ディズニー映画があまり好きではない。
万人受けを狙うために常に予定調和であるし、
商業主義が強過ぎるようにも感じるからである。
それでも、個々の作品にはうならせられる。
インサイド・ヘッド」や「ズートピア」を観ると、脚本の練られ方は半端なく、とんでもないくらいに考え抜かれたものであろうと思う。
選び抜かれた天才たちが、さらにギリギリまで頭を絞っているのだろう。
そして、あれが、世界基準なのだと感じる。

日本のアニメは世界一と言う人は多いし、私もそう思う。
質も量も多様性も、日本のアニメはすごい。
しかし、こと映画となると、どうだろう。
SAOの脚本はどれくらい練られたのだろう。
世界基準を意識して作られただろうか。
ファンの審美眼は甘過ぎはしないだろうか。

クール・ジャパンをもてはやすのもいいが、質を上げていかないと内輪で盛り上がっているだけということになりかねない。
質を上げるためにはどうしたらいいかということも考える必要がある。
SAOを観てからしばらく経って、そんな不安を覚えている。

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映画評 「彼らが本気で編むときは、」 [映画評]

荻上直子さん監督の、「彼らが本気で編むときは、」を観た。
「かもめ食堂」「めがね」でお馴染みの監督で、登場人物への温かいまなざしが特徴と言えるだろう。
LGBTをテーマとして映画を撮られることに違和感はない。

この映画、何と言っても、女性として人生を歩もうとしているトランスジェンダーの主人公を、生田斗真さんが演じているのが話題である。
生田さんと言えば、年末には「土竜の唄」で、ふんどしで「バッチ来~い!」と叫んでおられた。
この振り幅が生田さんの魅力であろう。
映画俳優として、どんどん大きくなっていただきたい。

物語は、奔放に暮らす母親が、何度目かの家出をしてしまい、小学生(11歳)の女の子トモが置き去りにされたところから始まる。
トモが、預かってもらう叔父のマキオの家を訪ねると、彼は恋人リンコと生活していた。
トランスジェンダーのリンコに、はじめトモはドン引きだが、だんだん互いにひかれてき・・・
というストーリーである。

トモは、どうしようもない母親には頼らない覚悟をしており、強い女の子を装っている。
しかし、そこは11歳であり、弱い面も多々ある。
そんな揺れ動く年頃を、子役の柿原りんかさんが懸命に演じている。
彼女の存在が説得力を持つかどうかにこの映画の成否はかなりかかっており、その大切な役割をしっかりやりきられたと思う。

叔父のマキオ役は、売れっ子の桐谷健太さん。
テンションの高い役が多かった気がするが、この映画では落ち着いた演技。
こういうのもいい。

出演陣では、田中美佐子さんを久し振りに見られたのがうれしかった。
最初、よく似た人かなと思ったが、やはり田中さんだった。
もう60近いということに驚きだが、年相応であり、かつ、お綺麗だった。

映画では、性的少数者を、弱者として描き、傷つきやすく純粋なものとしている。
一方、いわゆる「世間」は、偏見に満ちていて、冷たい。
現実、そういう面もあるかもしれないが、この描き方がステレオタイプに過ぎて、面白味がないばかりでなく、映画の深みも与えられていない感がある。
2時間に収めるためには、わかりやすさも必要であり、あっちもこっちもというのは難しいと理解するが、もうワンパンチ欲しかった気がする。

この映画は、カップルで観てもいいし、親子連れで観るのもありだと思う。
いい意味でも悪い意味でも、安心して観ることができる。
一方、とんがった映画、小さくても輝く佳品、を求めるとちょっと肩すかしかもしれない。

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映画評 「怒り」 [映画評]

昨年秋に公開された「怒り」を遅ればせながら観た。
秋の段階では、予告編からして重そうだったので、観ようか観まいか迷っていたところ、ネットの評がイマイチだったので、「なら、まあいいか」と見送ってしまった。
ネットの評があてにならないことなど、嫌というほど知っているのに。
日本アカデミー賞に最多11部門ノミネートされたのを知り、観ておけばよかったと後悔した。
幸い、この時期になって近くの映画館でも公開が始まったのを機会に、意を決して行ってきた。

予想どおり、というか予想以上にしんどい映画だった。
出演陣は、
渡辺謙と宮崎あおいの親子に松山ケンイチが絡み、
妻夫木聡と綾野剛がまさに絡み、
森山未來と広瀬すずも出てくるというまさに超豪華版
この主演級のキャストが、それぞれ気合いの入った演技を見せている。

誰のどんな「怒り」が炸裂するのか。
映画は、序盤から緊張感をはらみながら進む。

人を殺すような強烈な怒り、
人を許せないという怒り、
自分に我慢できないという怒り。
いろいろな怒りが渦巻き、観ているものを締め付ける。
どんな怒りが本当に強いのか、
どんな怒りが本当に怖いのか。
とらえ方は人それぞれで分かれそうな映画であった。
しかし、それも投げっぱなしという感じではなく、映画としてはキチンと決着している。
この辺り、李監督の手腕はさすがである。

決して後味のいい映画ではなく、観る人を選ぶ面はあるかもしれない。
PG-12となっているが、小学生が観るにはかなり早い。
「すずちゃんが出てるから行ってみよう」
的なノリで映画を観始めると、えらい目に遭う。
初デートでこの作品もきつかろう。
しかし、この映画でちゃんと語り合えるようなら、長くつき合えそうだ。

「怒り」は、映画ファンにはぜひご覧いただきたい作品である。
よい気分になれるかどうかは保証できないが、本気の映画を観ることができる。
俳優陣の頑張りは特筆ものである。
2時間ほど空いたし、スター共演だから観てみようか的な感じで入ってしまうと、アチチチチということになりそうだ。
それもいい経験だが。

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日本アカデミー賞 作品賞「シン・ゴジラ」で納得も「ちはやふる」がないのは残念 [映画評]

日本アカデミー賞も、40回目を迎えた。
アメリカのアカデミー賞ほどの盛り上がりにはならないが、日本の映画賞の頂点として確立されてきたように思う。
例年、結果には異論も出るが、過去の受賞作を並べてみると、それなりの納得感もある。

今年は、「シン・ゴジラ」と「怒り」が多くの部門でノミネートされていた。
大ヒットした怪獣映画と、人の内面をえぐる佳作というマッチアップで注目されたが、結果はゴジラの圧勝だった。
「怒り」は、最多11部門で優秀賞を獲得していたのだが、最優秀となったのは妻夫木聡の最優秀助演男優賞のみだった。
主演級総出演のあの映画にあっても、妻夫木さんの存在感は際立っていた。

ゴジラは、作品賞を含め、監督賞、撮影賞など7部門を獲得した。
この映画は、単純に面白かったし、驚きもあった。
社会を巻き込んでヒットしていったのも気持ちがよかった。
樋口真嗣監督としては、前年の「進撃の巨人」の大失態をすぐに取り返した格好になった。

「湯を沸かすほどの熱い愛」が最優秀主演女優賞で宮沢りえさん、最優秀助演女優賞で杉咲花がダブル受賞。
映画の中での親子が受賞したことになる。
いい映画で、いい演技をされた二人の受賞にはこちらもジンと来る。

最優秀主演男優賞は、「64-ロクヨン-前編」の演技で佐藤浩市さん。
この映画、とにかく後編がひどい出来で、そのせいでこの受賞も喜べない。
まあ、佐藤さんの責任ではないけれど。

激戦だったのではないかと予想する最優秀アニメーション作品賞は、「君の名は。」を抑えて「この世界の片隅に」が受賞。
信じられないくらい素晴らしい作品であったので、当然の結果にほっとした。
ただ、会場にのんさんの姿がなかったのにはがっかり。
映画に魂を吹き込んだ大きな役割を果たされたし、話題を提供された大きな存在でもあったのに。
もしこれが事務所関係のごたごたが影響しているのだとしたら、自由を愛するはずの映画界としては大変残念である。

全体的に納まるべきところに納まった感じではあるが、個人的には「ちはやふる 上の句」を評価してほしかった。
賞に引っかかったのは、広瀬すずさんの主演女優賞でのノミネートだけ。
賞レースに乗るタイプの作品ではないことは承知しているが、おととしの「ヒロイン失格」なども含め、そっち系の佳作にもしっかり目くばせしていただきたい。
難しげな作品ばかりではなく。

それにしても、製作が発表された「ちはやふる」の続編はいつ公開になるのだろう。
世の中、何が起きるかわからないのだから、早く作って欲しいと勝手に焦っている。

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映画評 「ラ・ラ・ランド」 [映画評]

ドラマーの壮絶な成長を描いた映画セッション」に大きな衝撃を受けた。
あの緊張感といったらなかった。
夢に出てきそうな鬼教官だったが、ただ怖いだけではなく映画として非常によくできていた。
「ラ・ラ・ランド」は、「セッション」を撮ったデミアン・チャゼル監督作品であり、アカデミー賞では「タイタニック」に並ぶ史上最多14部門にノミネートされた。
これはもう、期待するなという方が無理だ。
私が行った劇場は、ほぼ満席の盛況。
前評判の高さが関心を引いているようだ。

「夢をみていた」
「観るもの全てが恋に落ちる、極上のミュージカル・エンターテイメント
というのが売り文句だが、まさにその通りの作品であった。
ミュージカルだから、突拍子もなく出演者が歌い、踊り出す。
話の展開にもやや唐突な感がなくはないが、映画の魔法に引き込まれていく。
音楽、映像が素晴らしい。

主演のライアン・ゴズリングとエマ・ストーンも期待に違わぬ素晴らしさ。
この映画を撮るには大変な努力があったと思うが、エマはアカデミー賞の主演女優賞を獲得し、報われた。
ライアンも役者としての評価を確実なものにした。

正直、ストーリー自体に驚きはない。
夢を追う男女が魅かれ合い、成功を勝ち得ていく過程ですれ違いが生じるという流れは、定番とも呼べるもの。
だが、映像や音楽の素晴らしさが、観る者をグッとつかまえる。
ちょっと苦いラストも、いいスパイスになっていた。

「ラ・ラ・ランド」は、すべての映画ファンにお勧めできる良質のエンタテインメントである。
出だしから、魔法にかけられる。
老若男女、観る人を選ばない快作である。
そこまで褒めておいてあえて言うと、「セッション」を超えるような感動を求めて観に行くと、ちょっと当てが外れるかもしれない。
いい映画だし、何回も観に行く人がいるだろう。
そして、観るたびに発見があるのではないだろうか。
それでも、どちらを選ぶか聞かれたら、私は迷うことなく「セッション」を選ぶ。
今後デミアン・チャゼル監督は、メガヒットを求められることになるだろうが、いつか再び「セッション」のような、観ている方が逃げ出したくなるような作品も作っていただきたいものである。

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映画評 「きょうのキラ君」 [映画評]

映画が好きだから、できる限り映画館に足を運ぶようにしている。
しかし、時間的な制約もあるから、なんでも観られるわけではない。
だから、私は私なりに面白そうな映画を選んでいるつもりである。
「きょうのキラ君」については、予告編では何も魅かれるところはなかったが、監督に期待した。
なにしろ川村泰祐監督は、私の愛する「海月姫」を撮った方なのだ。
前作の「ガールズ・ステップ」も、まったくヒットしなかったようだが、私は十分楽しんだ。
川村監督の作品なら、大丈夫。
私は、ゆるぎなき自信を持って映画館の席に着いた。

だが、期待は裏切られるものである。
前半は、端折り過ぎな感はありつつ、テンポよく進む。
ちょっと急ぎ過ぎで、設定がちっとも生きてないぞ、と思いつつ、川村監督のことだから、きちんと帳尻を合わせてくれると安心して身を委ねる。
しかし、あれ、ほろ、はれ。
何にもないぞ、何にも伝わんないぞ、大丈夫か、大丈夫なのか、
と心配しているうちに、映画は終了を迎えてしまった。
ラストに向かって盛り上がるどころか、加速度的に陳腐さを増し、最後は完全崩壊に近い状況に。
いやはや、空っぽであった。

主演の中川大志さん、飯豊まりえさんのお二人は健闘されたと思う。
中川さんはカッコよかったし、飯豊さんのオドオドぶりもはまっていた。
分かり易す過ぎる芝居っぷりであったが、与えられた陳腐な脚本を懸命にこなされていたと言っていいだろう。
しかし、誰がどう演じてもあの本ではどうにもならない。
もちろん、本が悪くても何とかするのが監督さんの手腕だと思うが、今作ではそれがまったく発揮されなかった。

どんな映画でも、それを「面白い」と思う人はいるかもしれないし、川村監督にリベンジの機会も持ってもらいたいと思うから、今作についてもお客さんが入るに越したことはない。
先週公開された「ソードアートオンライン」も、個人的にはひたすら睡魔と戦う時間となったが、大ヒットしているらしく、人によって受け止め方は様々である。
今作を誰かに勧めるとしたら、まずは、中川大志さんのファンだろうか。
全編カッコよく、上半身裸のサービスシーンまである。
飯豊まりえさんも出ずっぱりだから、彼女のファンも楽しめるだろう。
友達役の平祐奈さんは、いつもと同じような役でいつもと同じような演技だったが、彼女のファンにとっても楽しめると思う。
原作ファンにとっては微妙かもしれないが、そんなにシリアスな話でもないので、気楽な気持ちで観に来ていただきたい。
また、小中学生の女子なら、単純に楽しめるかもしれない。
友達どおしで、観終わった後、ワイワイ言い合ってはどうだろう。

当たり前の話だが、どんな監督でも、百発百中は難しいなあと改めて思った次第である。
ついていくと決めたので、川村監督の次回作も必ず観に行きはするけれど、信頼値は大きく下がってしまったと言わざるを得ない。

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映画評 「咲 -Saki-」 [映画評]

「咲 -Saki-」と言われても、ご存じない方も少なくないだろう。
麻雀に打ち込む女子高生たちの姿を描く漫画の実写版である。
2006年より「ヤングガンガン」なる漫画誌で連載が開始され、現在も連載中であるという。
ちなみに、私にとって麻雀漫画とは、かなり古いのだが「ぎゅわんぶらあ自己中心派」であり、「哭きの竜」である。
こちらも、多くの方がご存じないだろうが。

「咲 -Saki-」の世界では、麻雀人口が拡大し、女子高生たちによる学校対抗戦が行われている。
しかし、残念ながら現実世界では麻雀離れが言われて久しい。
街の雀荘も、どんどん閉店しているようだ。
4人集まらないとできない、時間がかかる、暗い、煙草臭い、などなどのイメージが時代にそぐわず、学生の麻雀離れにつながっているのだろうか。
のめり込むかどうかは抜きにして、一度は踏み込んだ方がいい世界だと思うのだが。

映画「咲 -Saki-」は、リアリティを追及した作品ではない。
和田誠さん監督の「麻雀放浪記」的な、人間ドラマでもない。
まさに漫画チックな世界であり、可愛い女の子たちが、通常ではありえない闘牌を繰り広げる。
カードゲームアニメを想像していただくと、当たらずとも遠からずの感じである。
スポ根の要素もあり、「ちはやふる」的なニュアンスもある。
派手な技の応酬には、「リングにかけろ」のにおいもある。

この世界観に入り込むにはちょっと助走が必要で、前半は厳しかった。
これを2時間見るのはしんどいなあ、と正直思った。
しかし、割り切って眺めているうちに、まあこういうのもありかと思い始めた。
もちろん、「いい映画」「優れた作品」という観点では、本作はまったくなっていない。
ストーリーは予定調和であるうえに雑だし、
映像にもお金や手間暇はかけられていないし、
出演者たちの演技もほにゃほにゃである。
それでも、不思議な魅力があったのも確かである。

麻雀映画というよりアイドル映画であり、
青春映画というには軽過ぎる。
それでいて、なんとなく楽しんでしまっている自分に気づいた。
しまいには、女の子たちが頑張って麻雀してるんだから、もうなんでもいいじゃないか、などと思うようになってしまった。

この映画、麻雀を知らない人が観たらどうなのだろう。
楽しめるのだろうか。
やたらとカンが出るのだが、その珍しさがわからないとそんなに面白がれないだろうか。
海底を得意技とする女の子がいるのだが、その異様さがわからないとそんなに面白がれないだろうか。
それとも、別にルールなんか知らなくても、なんとなく盛り上がれるだろうか。

「咲 -Saki-」は、女の子が大挙して出演する映画である。
アイドルファンにとっては、それだけで楽しめるだろう。
麻雀ファンが、本格的な麻雀シーンを期待するとハラホロヒレハレとなるが、単純に、麻雀をテーマとした映画が公開されたことだけで喜んでしまった方がいい。

本作は、名作ではないし、傑作のはずもなく、作り手も初めからそこを狙ってはいないだろう。
ちょっといい加減にしてよ、と言いたくなる人もおられるかもしれない。
たが、私は、損した気にはならなかった。
というか、かなり楽しませていただいた。
続編があったら観に行くかと聞かれると、正直微妙なのだが、都合がついたら行ってしまうかもしれない。

映画に関する情報はこちらから
http://www.saki-project.jp/

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映画評 「劇場版 ソードアート・オンライン ―オーディナル・スケール― 」 [映画評]

「ソードアート・オンライン」略してSAOは、日本国内のみならず海外でも非常に高い人気を誇っている。
オンライン小説からスタートし、ライトノベル、漫画アニメゲームと幅を広げ、熱烈な支持者も多いと聞く。
私は、アニメさえも見たことがないというまったくの初心者であるが、映画の公開を待ちわびる熱のようなものを外野から感じていた。

私が観たのは、公開初日とは言いながら、夜に上映されるレイトショー。
それでも、客席は8割以上の入りであった。
ひょっとしたら、夜に観る層が多い映画なのかもしれないが、それを差し引いてもファンの多さがわかる。
みな、この映画を楽しみにしていたのがよく伝わってきた。
私の期待も高まった。

しかし、残念ながらまったく楽しめなかった。
それほどややこしい筋立てではないし、映画の初めのところでそれまでの流れもおさらいしてくれるので、原作もアニメも知らなくても、話を理解することはできる。
だから、わけがわからなくて楽しめなかったわけではない。
ただ、映画として楽しめなかった。

今作の悪役は、不慮の事故で肉親を失い、それを取り戻すためにまわりの犠牲をいとわずに悪を重ねてしまう科学者。
これまでいろいろな作品で、散々やられた感のある設定である。
企画会議でとりあえず出してみて、「それ、もういろんなとこでやられてるよね」と一蹴されそうなアイデア。
使い古されたストーリーでも、新たな味付けでよみがえることはあり得るのだが、今作の場合それはなかった。

ゲームの中での戦いがリアルにつながるという設定も、既視感満載。
ひょっとしたら、それを広めたのがSAOなのかもしれないが、であれば次元の違う展開を見せて欲しかった。
あまりにも定番の流れで物語は進んだ。

戦闘シーンの映像はなかなかの迫力で、絵だけを楽しみにすればよくできていると思う。
ファンはスカッとするのだろう。
しかし、この映画だけを見に来た人からすれば、なぜこの人だけこんなに強いのかまったく描かれていないものだから、さっぱり入り込めない。
まあ、一見さんお断り、というのならそうなのかもしれないが、そこまでとんがった感もない。

人気のある作品で、多くのお客さんを集めてもいたので、
きっといいところもあるのだろうと思う。
思うが、私にはそれは見つけられなかった。
頑張って、かなり頑張って見つけようとしたのだが、私には難しかった。
何度も意識が飛びかけ、目を閉じたら負けだと言い聞かせ、なんとかそれだけは阻止した。
苦しい戦いだった。

ネットの映画評を読むと、SAOファンには好評のようだ。
私には理解しがたく、本当のファンならもっと厳しく評価すべきなのではないかと思ったりもするのだが、実際に感動されているようなので、それならそれで目出度いことである。
人にお勧めする勇気は私には到底持てないが。

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