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映画評 「3月のライオン 後編」 [映画評]

原作は未読であるが、「3月のライオン」の公開を楽しみにしていた。
予告編がよくできていたし、将棋をテーマにするのも興味深いし、出演陣も魅力的だったからである。
しかし、待ちわびた前編は散々な出来だった。
期待していただけに失望も大きかった。
あの前編からの挽回はとても無理だろうと思ったので、後編を観るつもりはなかったのだが、なんとなく流れで観に行くことになった。
後編も、前半はまったくよろしくない感じで進み、こりゃひどい映画になっちゃったなあと思っていたのだが、後半になって盛り返した。
いくら盛り返しても、それまでの失態を取り返すまでには至らないが、終わりよければで、なんとなくそれらしい感じにはなった。

どうなることかと心配させられた前半は、エピソードをどんどんブッ込む感じで進んでいく。
結果、飽きはしないが、個々がぶつ切れになっていて、心は動かない。
原作のつまみ食い感が募り、漫画を映画化する難しさに思いが沈む。
本来魅力的であろう登場人物たちも、描き方が甘いから、伝わり方もほんの上っ面であった。

後半は、前編から撒いてあった伏線をいろいろ回収していく流れになり、なんとか乗って行けた。
「駄目だ、こりゃ」
と思っていたのが、だんだんよくなっていき、最後は「なかなかだったなあ」まで連れて行ってもらえた。
それでも傑作まではほど遠いが、前編と後編の前半のイケテナイ感じをなんとか取り返した感じではあった。
個人的には、勝負のシーンでもっと盛り上げてほしかったし、
目標としている宗谷名人や同世代のライバルについてもキチンと描いてほしかったが、
そういう作品ではなかった。

役者陣は頑張っておられた。
主演の神木隆之介の演技は、いつもしっかりしている。
神木くんじゃなければ、もっとひどいことになっていた。
有村架純さんも健闘されたと思う。
彼女の役どころは、難しいというより意味不明であったから、あれ以上は難しい。
残念だったのは、故村山氏をモデルとしているという二階堂役を演じた染谷さんの出番がほとんどなかったこと。
魅力的な役柄になるはずであり、染谷さんも特殊メイクをこってりされていたのに、あまりにももったいなく、なんとかならなかったのだろうか。
それほど重要な役ではなかったのに存在感が光ったのが高橋一生さん。
さすがに旬の役者さんである。

「3月のライオン 後編」は盛りだくさん。
ヒューマンドラマに仕上がっているから、将棋を知らなくても楽しめるというより、将棋を楽しみにしない方がかえっていいかもしれない。
後編だけではよくわからないところがあり、前編にさかのぼりたくなる方もおられるとは思うが、そこまでされることもないと思う。
後編だけお楽しみいただければ。

それにしても、このところ邦画で流行りの前後編公開は、もうやめにしてもらいたい。
「ちはやふる」以外は、惨憺たる内容ばかりである。
どんなに原作が長尺でも、それを2時間にまとめるのがプロの業であるはずであり、それができないのなら映画化しないでもらいたい。
心からそう願いたい。

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映画評 「ReLIFE リライフ」 [映画評]

「ReLIFE リライフ」は、comicoにて連載されていた漫画が原作。
comicoとは、スマートデバイス向けの無料漫画・小説アプリである。
映画化されると聞いたときは、「まあ、あえて観に行くこともないかな」と思っていたのだが、予告編がなかなかな感じで、ついふらりと。

映画は、漫画、しかもスマホ向けがもとであった作品らしく、わかりやすい展開で進む。
無理のある設定なのだが、ややこしいことは抜きに、バリバリ前に行く。

ストーリーは、
27歳のニート青年が容姿を若くして社会復帰する実験に参加し、17歳の高校生となって恋と青春を謳歌する姿を捉える、
というもの。
「誰がその実験の主催者なの?」
「実験の目的は?」
「1年経ったら記憶が消えるっていうけど、どうやって?」
などなど、ほんのちょっとでも頭を使ってしまうといろいろな疑問が後から後から湧いてくるが、それを言うのは野暮である。

主人公は、ニートと括るにはしっかりした青年で、人生をやり直すといっても、あまりギャップがないのがつまらないし、
登場人物たちが、皆小ぎれいなのもリアリティに欠ける。
などなど、至らないところも数々見られるのだが、これはこれでありかな、と思わせる魅力もあった。
大ぶりな設定と裏腹に小さくまとまった作品であり、そのつもりで観るのがルールであろう。

主演は、中川大志くん。
わかりやすい役どころをわかりやすく演じていた。
相手役は、平祐奈さん。
この二人の絡みは、ほんのちょっと前に公開された「今日のキラ君」に続くもので、いくらなんでも少し配慮してほしいものではある。
似たような役が多かった平さんだが、今作ではコミカルな演技にも挑戦されており、主演級への試金石のような作品になったと思う。

「今の精神年齢のまま、学生に戻りたい」
というのは、多くの人が持つ願望であろう。
「リライフ」は、それを映像の形で届けてくれる。
その意味では、万人受けする作品と言えるかもしれない。
肩に力を入れず、すんなり見れば、すんなり見られる作品である。
無理に時間を作って観に行くこともないと思うが、
ふらっと時間が空いたのなら観に行かれて、若さを取り戻されてもよろしいかと思う。
もちろん、若者が観れば、そのまま楽しめる。
文化祭、花火など、定番満載である。

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映画評 「名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)」 [映画評]

先週行われた競馬クラシック第1弾桜花賞に、カラクレナイという馬が出走した。
前哨戦のフィリーズレビューを制していた実力派であり、翌週この言葉を使うコナン映画が公開されることを知っていた人は、思わず買ってしまったかもしれない。
結果、惜しくも4着だった。

さて、劇場版の名探偵コナンシリーズは今回で第21弾となった。
これだけ続くとだんだん飽きられてくるものだが、コナン人気は右肩上がり。
昨年の第20弾は、過去最大のヒットとなり興収は60億円を突破し、邦画では「君の名は。」「シン・ゴジラ」に次ぐ第3位であった。
今作も、上々の人気ぶり。
私が行ったのは夜の部だったが、それでもほぼ満席の盛況だった。
しかも、大人の層が多かったことに驚いた。

しかし、ヒットしているからいい作品とは限らない。
去年のコナンは、正直ひどい作品だったと思うし、その前の年も、その前の年もいただけなかった。
それでも客が入ってしまうから製作者側にも響かない。

今年も心配したが、「黒ずくめ」の組織を取り上げる回はつまらなくて、それ以外の回はそこそこ、というパターンになっている気がするので、今作は大丈夫な回。
実際、昨年に比べると、観られる作品になっていた。

コナン作品においては、事件の規模の大きさに比較して「動機の弱さ」が毎回気になるところだが、今回も同様。
今回の事件も、現実に起きたら日本犯罪史上に残る大事件になる規模の話なのだが、その規模感と比べると動機は「?」。
まあ、毎回こんなんだから、今さらどうでもいいが。
高度な爆弾が使われるのだが、犯人はどこでこの知識を仕入れ、どこでこれを手に入れたのだろうなど、考えたら野暮なことは無数にある。
だから、例年と同じく、真面目に考えたら損である。
作り手も、その辺を真面目に考えてはいないのだから。

そこいらを取っ払えば(そこいらを取っ払ったら、探偵ものではなくなるが)、それなりに楽しめる作品だった。
特に、アクションシーンはアニメでしかできない大掛かりなもの。
大スクリーンで映える。
ストーリーも、無理に無理を重ねたものだから感情移入をするには至らないものの、飽きてしまうようなものではない。
どんどん追加される無茶な設定を笑い飛ばす気で見ればいい。

主要登場人物を全員出させているだけに、それぞれの扱いがぞんざいで、ストーリーにも雑音が生じる。
所詮、シリーズの中の1作という位置づけに過ぎないのだろう。
「この映画を世に問う」とか
「いつまでも心に残る作品にする」とか
「クールジャパンの代表選手になる」とか
そんな願望は、作り手には初めからないのだと思う。
野心なく映画が作られてしまうのは個人的には大変残念だが、それをコナン映画に求めるのは、自動販売機に心のこもった接客を求めるようなものだろうか。

「名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)」は、コナン映画を楽しめる心の広い人には安心して進められる作品。
ここ2~3年の中では、一番いいと思う。
昨年の、「純黒の悪夢」でがっかりした人も、もう一度チャレンジしてみてはどうだろう。
一方、いないと思うが、
作り手の執念のこもった歴史に残る傑作が観たい人、
推理を楽しみたい人、
ただ、いい映画を観たい人、
などにはまったく不向きである。
そんな人はいないと思うが。

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映画評 「キングコング:髑髏島の巨神」 [映画評]

キングコングの第一作目が作られたのは、1933年のことである。
それ以来、何度もリメイクされてきた。
今回のコングは、2005年のピーター・ジャクソン監督の作品以来ということになる。

キングコング映画については、偉大な第一作目をどうとらえるかがポイントとなる。
忠実にカバーするのか、
オマージュしつつ新たなテイストを付け加えるのか、
それともまったく別の解釈をするのか。

今作では、キングコングは都市には来ない。
大自然での闘いが中心であり、パニック映画の「アナコンダ」的空気もある。
様々な巨大生物も登場してきて、「怪獣大決戦」的雰囲気もある。
その意味では、新機軸と言ってもいいだろう。
一方、美女との絡みも用意されていて、オマージュも忘れていない。

俳優陣には、サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・グッドマンといった名優が並ぶ。
おバカっぽい役どころを、ノリノリで演じている。
コングの相手方とも言うべき美女役は、アカデミー賞受賞女優であるブリー・ラーソンが務めた。
そのほかにもかなり大勢の役者が出ているが、ご推察のとおり、映画の中では次々にやられていく。
こうした映画では、誰がやられるのか、誰が残るのかを想像しながら観るのも楽しみの一つだろう。

変な表現だが、ちゃんとした怪獣映画であった。
ハリウッド映画の特撮は、本当に凄い。
迫力満点のバトルが繰り広げられる。
登場人物の不可解な行動も、こうした映画ではお約束。
いや、なんでそっち行っちゃうかなあ、というシーンの連続も、大いにありである。
心に残りも、胸に染みもしないが、これはこれでちゃんとしていた。

驚いたのは、延々と続いたエンドロール後の映像。
今後の予告めいたシーンが映るのだが、そこにはゴジラやモスラやキングギドラとおぼしき姿が映っていた。
なんでも、次作以降では、キングコングとゴジラが戦うような話もあるらしい。
楽しみなような不安のような。

教訓として獲るものもなければ、
いいものを見たとしみじみすることもない。
パーッと見てパーッと忘れて、それっきりである。
しかし、映画というものは、そもそもそういうものでもある。
何も考えず、ウッホウッホと楽しみたければ、この映画はピッタリである。
ややこしいところなく、前半から見せ場の連続だから。

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映画評 「麻雀放浪記」 [映画評]

BSで映画麻雀放浪記」を放送していたので、録画して観た。
何十年ぶりかの再鑑賞だが、いろいろなシーンが蘇ってきた。
ほとんどの映画が、観た瞬間から消え去ってしまう中、この映画の印象がいかに強烈だったかがわかる。

はじめは、
「真田広之、若!」
「鹿賀丈史、カッコいい!」
大竹しのぶさん、かわい!」
とかで盛り上がっていたが、すぐに映画に引き込まれた。

鹿賀丈史さんが演じる「ドサ健」の人でなしぶりが半端なく、
男と女の関係も、今の常識からはまったく受け入れられない。
負けると分かっていて命を削り合う博打の様子も、常人にはまったく理解できない。
それでも、そこにある種の真実があるように思える。
切り刻み合いながら、奥底では認め合い、尊敬し合う。
その姿に美しさがあるように思える。

真田広之さんが演じる「坊や哲」、
高品格さんが演じる「出目徳」、
加藤健一さんが演じる「女衒の辰」、
名古屋章さんが演じる「上州虎」、
といった一人一人のキャラクターがしっかり立っている。
今回は、加藤健一さんの役に魅かれた。
きっと、観る年齢やそのときどきの心理状況などによって、魅かれる対象が変わって来るのではないだろうか。
次に見るときは名古屋章さんに感情移入するかもしれない。
名画ならではの現象である。

加賀まりこさん、大竹しのぶさんの女優陣も素敵である。
この映画では、化け物のような男たちの生き様が中心に描かれるのだか、それを映えさせているのが、寄り添って生きていた女性の存在である。
翻弄されるばかりではなく、本当の強さを持つ存在として描かれている。

麻雀放浪記は、もちろんフィクションである。
しかし、本当にこういう男たちがいて、こういう勝負があったのではないかと思わせる。
この映画がリアリティを持つのは、アメリカ軍の占領下にあるという異常な状況下を舞台にしているからであろう。
本能のままに生きていける、生きていくしかない時代として描かれている。

麻雀放浪記を観て、読んで、多くの男が「こんな生き方をしてみたい」と憧れを持った。
一方、こんな生き方は絶対にできるはずがないともわかっている。
ドサ健に、
「てめえらにできることは長生きだけだ」
とののしられても、そうやって生きていくしかない。
できるのは、素晴らしい映画を観て、それを素晴らしいと伝えていくことくらいだ。

映画「麻雀放浪記」は、演出、脚本、俳優が見事に組み合わさった、奇跡的な傑作である。
名画座でやっていたら迷わずGOである。
観ていない人は、DVDでもテレビ放映時でもなんでもいいので、ぜひご覧いただきたい。
麻雀を知らなくても、きっと堪能できる。

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映画評 「SING/シング」 [映画評]

日本でも大ヒットスタートを切った「SING/シング」を観た。
評判どおり、2時間がアッという間だった。
アメリカアニメらしく、
脚本は徹底的に練り込まれており、
それをきっちり映像として表現している。
ビッグマネーを扱うプロの業である。

いろいろな登場人物(動物?)がいるが、自分を重ねて観られるように設定されている感じである。
若者だったり、主婦だったり、夢を追う社会人だったり。
それぞれが悩みや問題を抱えながら、なんとかやり過ごしつつ、未来を夢見ている。

しかし、思い切り楽しめたかと言えば、正直そうではない。
この設定で、
80年代ポップスも満載で、
みんなが待ってるハッピーエンド
と来れば、もっと盛り上がれてもいいはずだと思うが、そうはならなかった。
あまりにも、見え見え、予定調和過ぎる展開だったからである。

こうした映画は、ただ口を開けて体を動かして楽しめばいいのだとわかってはいるが、それにしても安易に幸せなクライマックスなだれ込んでいく。
それでいいとは言っても、あまりにも真っすぐ過ぎる。
安直過ぎる。
途中、大仕掛けの挫折があるが、そこからの立ち直りも妙にすんなり。
もちろん、万人受けを狙う宿命を持っていることや、尺の関係で、云々やっていられないのはわかるが、もう一息詰めてもらわないとさすがに興覚めする。

とはいっても、「SING/シング」は誰もが楽しめる映画ではある。
子供から大人まで楽しめるよう、様々な工夫がしてあり、家族連れはもちろん、学生さんも、カップルも、アッという間の2時間を過ごせるだろう。
傑作、快作を期待すると、ちょっと残念な気にはなるが、作り手はそんな客は最初から相手にしていないだろう。

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映画評 「3月のライオン 前編」 [映画評]

この映画は、予告編が魅力的だった。
前編後編に分かれているのが大問題だが、去年の「ちはやふる」のような成功例もある。(大抵は、「64」や「進撃の巨人」のようにひどいことになってしまうが)
日経の映画評では★二つ、Yahoo!の映画評は高評価という分かれ方にもかえって楽しみをあおられ、期待感を高めて観に行った。

結論から言うと、予告編がよくできていた、ということになる。
いい予告編を作られた。
この本編であの予告編。
素晴らしい。

漫画原作を映画化する際によくあるのだが、とにかく設定の説得力がなさすぎる。
時間がないからなのかもしれないが、
主人公が将棋を始めたきっかけは何なのか、
主人公の引き取り手がどうしてなかなか見つからなかったのか、
どうして引き取り先の子供たちが最初からガンガン辛く当たってきたのか、
その辺さっぱりわからないから、感情移入のしようがない。
そうしたことを知りたければ、原作に当たってくれということなのだろうか。
若しくは、後編を観ればわかるということなのだろうか。
何にしても、そんな中途半端な作品を世に出さないでもらいたい。

主人公を演じるのは、神木隆之介くん。
彼の演技力については今さら言うまでもないが、この脚本と演出ではそれも活かされようもない。
意味不明の行動を取り続ける血のつながらない姉役を演じるのが有村架純さん。
すべての行動に「?」しかつかず、どう頑張られても空回りになる。

「勝負の厳しさ」みたいなところは描かれていたが、山場がどこなのかつかみかねた。
本当の山場は後編で、ということかもしれないが、前編だけでもしっかり盛り上げて、ある程度以上完結させるべきであろう。
だから、前編後編公開はイヤなのだ。

「3月のライオン 前編」を誰に勧めたらいいだろう?
将棋ファンの人には、きっと消化不良だろう。
どうせ将棋の映画を観るのなら、「聖の青春」を推す。
原作ファンの人には、おそらく不評だろう。
こんな話じゃない、と思うのではないだろうか。
神木くんのファンや、有村さんのファンなら、そこそこ楽しめるかもしれない。
有村さんには、意味不明の下着チラ見せシーンもあるから。

読んでいないが、きっと原作はいいのだろう。
それを活かし切れているとは到底思えなかった。
漫画原作を映画化したら残念、という典型的なパターンにはまってしまった。
後編での奇跡の巻き返しという可能性ももちろんあるが、前編がこれでは、映画史に残るような大傑作で初めてチャラという感じである。
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映画評 「話す犬を、離す」 [映画評]

私は犬が好きだ。
無条件に好きだ。
犬を見ているだけで、幸せな気分になる。
「話す犬を、離す」は、別に犬が主役の映画ではない。
しかし、要所要所に出てくる犬が実に可愛い
可愛い、と言ってもテリアやマルチーズ的な可愛さではない。
なんというか、犬らしい可愛さである。
これほど犬を可愛いと思わせる映画はあまりなかった気がする。
それが目的の映画ではないだろうけれど。

本作は、レビー小体型認知症を発症した母と、それを支える一人娘の物語である。
認知症といっても、それほど深刻なものではなく、幻視幻聴があるものの、日常生活に大きな支障はない。
それでも、家族としては心配になる。
主人公である娘は女優をしていて、映画出演のチャンスが舞い込むのだが、母の介護に気を遣わざるを得ず、なかなか集中できない。

主人公は、女優として芽が出ていない自分を歯がゆく思っていて、
友人の俳優や俳優の紹介で引き合わされた映画監督も主人公を引っ張り上げようとする。
しかし、認知症の母を一人で支える重みに、徐々に耐え切れなくなっていく。

映画は、それほど暗いトーンで描かれてはおらず、どこかユーモアも漂っている。
だから、大きな破綻はないのではと思って観ていたが、主人公の下す結論は苦いものだった。
通常の映画は甘いハッピーエンドで、そうした苦い決断は周りの支えでひっくり返ったりするのだが、そうはならなかった。
映画としては、それでよかった。

ちょっと残念だったのは、たまたまつけたラジオから流れてきた声に救われるシーン。
「何もつなげられなかった」と後悔する主人公を救済するために、なんらかの手立てをするのは必要であったと思うが、あまりにも偶然に左右される形だったのはちょっと興覚めだった。
ここをこうすれば、とか、ここをもっと真面目に突き詰めてくれれば、とか、いろいろ言いたくなる映画が多いなか、本作はきちんと作られていただけに、ご都合主義になってしまったラジオが残念。

主人公を演じておられたのは、つみきみほさん。
自然な演技で、すっかり役にはまっておられた。
まるで、ドキュメンタリーを見ているような気分にさえなった。

お母さん役の田島令子さんが、またいい味。
素人っぽいとまで思える演技なのだが、それが認知症という自分の状態に戸惑っている姿とうまく重なっていた。

監督は、熊谷まどかさんという女性の方。
ご自身を投影されたのかどうかわからないが、映画の中に出てくる女性映画監督がドタバタされていておかしい。
映画への情熱も、この人物を通して語られていた。

「話す犬を、離す」は、少ない予算で作られた映画であると思うが、それがかえってリアリティを醸しだす効果につながっていた。
認知症がテーマであるが、深刻になり過ぎず、かと言って受け流してもいない。
どんな人が観ても、身につまされるのではないだろうか。

そして、犬が可愛い。
口を開けてハアハアしている姿も、
草原をちょっと飛びながら走って来る姿も、実に可愛かった。

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映画評 「チア☆ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~」 [映画評]

映画「ビリギャル」の副題は、「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」である。
オチ言っちゃってんじゃん、ということにはなるが、実際には大抵の映画で薄々オチはわかっている。
水戸黄門だって、毎週オチは決まっているのに、大変な長寿番組だった。
今作も、女子高生がチアダンスで全米制覇するというオチが宣言されている。
だから、意外性はない。
すべてが予定調和で進んでいくことを、タイトルが宣言している。
逆に、「オチが見え見え」という批判は封印されるが。
観に行く客は、オチにつながる過程を楽しむことになる。

そして、私はそれなりに楽しめた。
友情あり、ほのかな恋あり、親子愛あり、師弟愛あり、挫折あり、涙あり、勝利あり、
という定番中のド定番の流れだが、ド定番になるのはそれが好きな人が多いからである。
退屈せず、楽しく観ることができた。
ギャグっぽいシーンが滑っている感は否めなかったし、
天海祐希演じる先生のエピソードは胸に響かなかったし、
ラストシーンももったいなかったし、
もっとできたんじゃないかとも思うけれど、
そこそこ楽しかった。

主演は、広瀬すずさん。
「海街diary」「ちはやふる -上の句」「ちはやふる -下の句」「四月は君の嘘」「怒り」
と広瀬さんが出演している映画を次々観ている。
特別、広瀬さんのファンというわけでもないのだが、話題作に次々出演されているということだろう。
今、最も走らせたい若手女優といった感じだろうか。
この映画でも、覚悟を固めて走り出すシーンがある。
ところで、「ちはやふる」のファンとして、広瀬さんを見るたびに思うのは、「『ちはやふる』の続編の撮影どうなっているのかしら?」ということである。
今作でも共演された真剣佑さんともども、そのときまで無事にいてほしい。

先生役の天海祐希さんは、設定に説得力がまったくなく、大げさな演技が空回りする形になっていた。
しかし、コメディと割り切れば、それはそれでいいのだろう。

「チア☆ダン」は、青春ど真ん中の映画。
青春真っただ中の若者も、
これから青春を迎える小学生も、
青春の時期は過ぎた大人たちも、
分かりやすく感情移入できる作品であると思う。
傑作とか秀作とかいうのとは遠いが、素直に楽しむことができる。
「なんか、俺も頑張んなきゃなあ」
という気にもさせてくれる。
広瀬すずファンなら文句なしに楽しめるし、
広瀬さんのファンでなくても、青春ものが好きなら愉快な2時間になるだろう。
最後は、なんと全米制覇である。

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劇場版「ソードアート・オンライン」で思うクール・ジャパンの危うさ [映画評]

劇場版ソードアート・オンライン オーディナル・スケール」が好調な興行を続けているようだ。
コアなファンを持つ作品は、初週にどっと客を入れ、その後は急激に下がるのがパターンだが、公開から3週を経過しても客足は衰えていないようだ。

私はソードアート・オンライン(SAO)についてはまったくの部外者だが、楽しみに観に行った。
海外でも人気の高い作品ということで、世界に通じる一本になっていることを期待した。
しかし、がっかりであった。
とてもではないが、傑作と呼べる作品ではないし、胸を張って世界に売れるともまったく感じられなかった。
何より、伝わってくるものがなかった。
だから、お客さんが入っていると聞いても、嬉しい気持ちにはなれない。

私は、ディズニー映画があまり好きではない。
万人受けを狙うために常に予定調和であるし、
商業主義が強過ぎるようにも感じるからである。
それでも、個々の作品にはうならせられる。
インサイド・ヘッド」や「ズートピア」を観ると、脚本の練られ方は半端なく、とんでもないくらいに考え抜かれたものであろうと思う。
選び抜かれた天才たちが、さらにギリギリまで頭を絞っているのだろう。
そして、あれが、世界基準なのだと感じる。

日本のアニメは世界一と言う人は多いし、私もそう思う。
質も量も多様性も、日本のアニメはすごい。
しかし、こと映画となると、どうだろう。
SAOの脚本はどれくらい練られたのだろう。
世界基準を意識して作られただろうか。
ファンの審美眼は甘過ぎはしないだろうか。

クール・ジャパンをもてはやすのもいいが、質を上げていかないと内輪で盛り上がっているだけということになりかねない。
質を上げるためにはどうしたらいいかということも考える必要がある。
SAOを観てからしばらく経って、そんな不安を覚えている。

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